ANAとJALの「ベトナムの空」争奪戦が熱い!

日本では服の製造国として名前をよく目にするベトナム。

このベトナムには、比較的大きい航空会社が3社あります。

1社は国営のベトナム航空。他の2社は民営のジェットスターパシフィック航空とベトジェットエア、いずれも格安航空会社、いわゆるLCCです。

ジェットスターパシフィック航空株式の70%をベトナム航空が保有していることから、事実上、ベトナムの航空会社としては、ベトナム航空とベトジェットエアの2社とも言えるかもしれません。

2017年7月25日、ベトジェットエアとJALが業務提携したという以下のニュースに興味を持ち、ベトナムの航空事情をまとめてみました。

JALとVietjet Aviation Joint Stock Company包括的業務提携に向けた覚書を締結 | プレスリリース | JAL企業サイト

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    ベトナムの3つの航空会社

    ベトナムの航空事情を語る前に、ベトナムの3つの航空会社について基礎情報。この中で、今回の記事でスポットを当てるのは赤字のところです。

    ベトナム航空

    1989年設立、90機を保有しているベトナム航空はベトナム最大の航空会社で、ハブ空港はノンバイ国際空港(ハノイ)、タンソンニャット国際空港(ホーチミン)、ダナン国際空港。

    アライアンスはスカイチームに加盟。フルサービスキャリアとして国内線の他、国際線はアジアだけでなく、ヨーロッパやオーストラリアにも定期便を飛ばしている。

    日本にはハノイから成田・羽田に週14便、関空・セントレアに週7便、福岡に週4便飛んでいます。このほか、ホーチミンから成田・関空・セントレア・福岡に、ダナンから成田にも飛んでいる。

    これまでJALと業務提携をしていたが、2014年に株式公開した際、ANAがベトナム航空株式の8.8%を取得するのを機に、ANAと業務提携し、2016年10月30日搭乗分からコードシェア便やマイレージクラブの相互提携を始めた。それに伴い、JALとのコードシェア便は2017年10月29日搭乗分を以て終了する。

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    ベトジェットエア

    2007年設立、当初はエアアジアとの合弁予定だったが、政府の外貨規制によりエアアジアは参入できず、2011年12月25日に単独で運航を開始。37機保有し、ハブ空港はノンバイ国際空港(ハノイ)、タンソンニャット国際空港(ホーチミン)。

    日本への定期便はなし。国際線は韓国・中国・台湾の他、東南アジアへのフライトが充実している。主力機材はA320/A321。

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    ジェットスターパシフィック航空

    カンタス航空30%、ベトナム航空が70%出資し、ジェットスター航空と業務提携した格安航空会社(LCC)。14機保有し、ハブ空港はタンソンニャット国際空港。

    日本への定期便は2017年9月からハノイー関空、ダナンー関空を週4便就航予定。ベトナム国内と東南アジアを中心にフライトが充実している。主力機材はA320。

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    ベトナムってどんな国?

    ベトナムって名前はよく聞きますが、いったいどんな国なんでしょうか。今回の記事で焦点を当てるところを赤字にしました。

    正式名称はベトナム社会主義共和国。人口9250万人で面積33.1万km2。

    社会主義国ながら日本との関係は良好で、ベトナムに対するODAは日本が首位。日系企業数は首位のタイに次ぐ第二位(1553社)。ベトナムから日本への渡航者ランキングは13位。

    ベトナム基礎データ | 外務省

    主力産業は第一次産業(農業、漁業など)だが、ここ数年は大3次産業(主に観光業)に力を入れており、当局は2020年までに観光業を主力産業に育て、2016年対比で2倍にすることを目標にしている。

    ベトナム、観光振興に注力 20年までに収入3.9兆円目指す - SankeiBiz(サンケイビズ)

    総合旅行サイト、エクスペディア・ジャパンが2016年の予約状況に基づく人気旅行先ランキングを発表しています。

    国別の旅行先ランキングにはベトナムが入っていませんが、人気急上昇の都市ランキングには1位にフーコック島、3位にダナンが入っています。

    1位のフーコック島は前年対比で2倍と、ベトナムが旅行先として注目され始めたことがわかりますね。

    発表!エクスペディア 2016年人気旅行先ランキング 「ベトナム最後の楽園」 フーコック島が前年比2倍の予約数|エクスペディア

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    ベトナムはANA、JALにとって重要な国

    話は戻って、航空事情について。

    ベトナムの航空会社3社とJAL、ANAとの関係はどうなんでしょう。

    航空連合としてみると、JALはワンワールド、ANAはスターアライアンスに加盟していますが、ベトナムの航空会社で3大航空連合に加盟しているのはスカイチーム加盟のベトナム航空だけで、繋がりはありません。

    つまり、通常はJALにとってもANAにとっても、自社便を飛ばす以外に自社便名でベトナムへ行く手段はないのです。ところが、ベトナムへの直行便は、JAL・ANA共に、羽田や成田からハノイ/ホーチミン行きがあるだけ。

    人気のフーコック島やなど地方路線に至っては当然自社便がなく、スカイチームやLCCに日本人旅行者を取られるのを、指を加えてみているしかないのです。

    こういった事情を解消すべく、これまではJALがベトナム航空と航空連合の枠を越えた業務提携によりコードシェア便を飛ばすことができていました。つまり、JAL便としてフーコック島やダナンへ行ってもらえる可能性があったわけです。

    2016年、ベトナム航空の提携先がJALからANAに変わるという大きな変化点がありました。ANAにとっては明るい話題ですが、JALにとっては大きな痛手だったはずです。ベトナムは観光業だけではなく、日系企業がタイに次ぐ2位と、出張者を見込める重要な国ですからね。

    2017年、日本のエアラインにとってベトナムで大きな動きが!

    ベトナム航空の提携先をANAに取られたJALはどうするのか、とても興味を持っていたところ、2017年7月25日に大きな発表がありました。LCCのベトジェットエアと業務提携するというニュースです。

    JAL、ベトジェットと提携へ LCCとベトナム路線網拡充

    正直驚きました。

    JALが海外LCCと業務提携するのは現時点では唯一になるのではないでしょうか。JALと関係があるLCCはジェットスターがありますが、国内線だけですし。

    JALとベトジェットエアとの関係は?

    JALとベトジェットエアはどんな関係だったのでしょうか。

    JALと三菱商事はカンタス航空とジェットスタージャパンを設立した背景があります。

    三菱商事 - プレスルーム - 2011年 - カンタスグループ、日本航空、三菱商事、ジェットスター・ジャパンの設立に合意 | 三菱商事

    ベトジェットエアは、三菱商事が筆頭株主である三菱UFJリースから融資を受けて、航空機3機を購入しています。

    ベトナム格安航空ベトジェット、三菱Uリースと融資契約締結 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    カンタス航空はジェットスターパシフィックへ出資しており、ANAとの関係もあって複雑なのですが、JALとベトジェットエアは三菱商事が仲介したようにみえますね。

    ベトジェットエアってどんなエアライン?

    ベトジェットエアの基本情報については先に書いた通りなのですが、一般的には「機内でビキニパフォーマンスがあるエアライン」ということのほうが有名かもしれません。

    forbesjapan.com

    過去には無許可でダンスパフォーマンスをやって制裁金を科せられるなどあったようですが、懲りずに継続して続けているようです。このショーは女性CEOも「保守的な文化の中でのエンパワーメントだ」と賛同しているようです。

    ビキニのダンスパフォーマンスショーはともかくとして、ベトジェットエアの制服はカジュアルでかわいいと評判です。日本発着便はないので、乗ってみたいときは最も近いところで韓国、上海、台湾へ行く必要がありますね。ベトナム国内線であれば、通常の割引運賃で片道2000円からとお値段もお値打ちです。

    ベトナムの航空会社争奪戦で気になったのは、JALの向かう先

    ここまで、企業視点で記事を書いてきましたが、一番気になるのは「JALはどこへ向かっているのか」「JALのブランド価値、サービスはどうなるのか」ということだと思います。

    JALはどこへ向かっているのかANAはグループ会社としてPeachやバニラエアを保有しているのに対し、JALは基本的にグループ内にLCCを持っていません。

    ジェットスタージャパンには出資していましたが、これは以下の記事のように、同じワンワールドのカンタスとの関係が影響していると思います。

    「JALがLCCに本格参入」報道は的外れ「格安を捨て、フルサービスに専念」こそが真相だ(町田 徹) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

    ところが、今回のベトジェットエアと業務提携は、ジェットスタージャパンの設立とは状況が異なります。

    LCCと一線を引いていたJALがベトジェットエアとのコードシェアを行ったり、マイレージなどの業務提携を行ったりすると発表しています。便利になっていくのは利用者にとって好ましいです。一方で、JALがこだわってきたフルサービスキャリアとしてのブランド価値の維持も重要だと思います。

    この業務提携内容はまだ明らかにされていませんので、業務提携を行う内容も見ながら、JALがどういった方向に向かっていくのか注目していきたいと思います。

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